バリの兄貴から直接学んだ人生の教訓・第9話

『物売りは』
 
カニを食べながらも、兄貴の教えは続いた。





「兄貴、物を売るとしたら、どういう物がいいですかね?」



来ていた中の一人が質問した。




『あんなぁ、物売りは人情重視のもんがええねん。』



人情重視…?




『応援を意識しての物売りがええっちゅうことや。


ブランドを意識したもんはあかん。』




なるほど…




『俺ベンツ乗っとるけどな、全く興味ないねん。


なんでかわかる?』




いや…なんでやろう…?





『来てくれ言うからな、ベンツ買いに行ってん。

そしたら、そこにいた受け付けのねーちゃんが、"なんやこいつ…"ちゅー目で見よってん。


それで一気に買う気なくしたわ。



来てくれて頼まれたから行ったのにな。』




なるほど…




『生産者が素晴らしいから売る。


支える人あっての◯◯が良いんや。』




なるほど…!!




大きいブランドになってしまうと、生産者の顔もわからない…




ブランドがあかんわけじゃないけど、受け付けのお姉さんは、生産者の気持ちをわからんもんなぁ……




『"どんな人が作ってる"を知らなあかんのや。


"世話になった"がないとあかん。』




『なんでか言うとなぁ、"俺が売ったった"っちゅーのがわかると、恩返しも早いんや』




なるほど…!!!!




"作ってもらった、それを売らせてもらえる"、という感謝の気持ち。


"売ってもらった"、という感謝の気持ち。



この、人情で成り立っていることが大事や、ということやな…!!!





『"まぁおいでーな、それやったら。"っちゅうな、そういう社会が素晴らしいんや』




ほんまにそうや…!!




私が小さい頃、たった30年前やけど、その頃はまだそんな社会やった。




この30年の間に、世の中は物凄く変化した気がする。




私が小さい頃は、子供だけで近所の家に遊びに行っていた。





でも今は、大人が着いて行けない時は、子供も遊びに行かせてもらえなかったりする。





「兄貴、今は、親が一緒に着いていけない時は、子供だけでは友達の家に遊びに行けなかったりするんですよ。




だから、親同士が仲良くないと子供も遊べなかったりしています。」





『なんやそれ!めちゃくちゃやな!』




「そうなんです…どうしたらいいですか?」





『あんなぁ、まず自分が近所の子ら受け入れたれ。



なんや言われるんやったら電話だけでもしといたらええ。



遠慮なんかいらん。そうしてたら、相手も同じことせなあかん、思ってやるようになる。


そういう社会が大事なんや。』




なるほど…!!!!




兄貴は何度も、人付き合いに遠慮なんかいらん、という言葉を言っている。




30年前と今、何が違うのか。




それは、人と人との距離感が一番違うんだと思った。




『自分が死んだ時にな、"お前のお母ちゃんに世話になったしな"と言われるようにすることが大事なんや。




それが子供に残してやれることや。』




なるほど…!!!!




子供に残してあげれることって、そんなこともあったんや…!!




「兄貴、ありがとうございます…!!」







『ほな、将棋しよか』



い、今から!!(笑)



そうして、真夜中3時過ぎからの将棋大会が始まった。






〜兄貴の教え〜

*物売りは人情重視したものを

*「俺が売ったった」が一番恩返しが早い

*「お前のお母ちゃんに世話になったしな」と言われることをしておく



〜つづく〜


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